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パントリーもSICも“部屋”は要らない?家を大きくせずに片づく収納のつくり方
家づくりの打合せでとても多いご要望が「収納をたくさん作りたい!」という声です。もちろん収納は大切。ですが、収納を増やす=部屋を増やす、と考えてしまうと、家が大きくなりやすく、建築費も上がり、必要な土地の広さにも影響します。
私たちが大切にしているのは、収納の“量”を増やすことよりも、「どこに」「どう使うか」を先に考えること。パントリーやSIC(シューズクローク)、ファミリークローゼットなどの“収納専用の部屋”がなくても、工夫次第で暮らしは十分回ります。
今回は、実際のお家の事例をもとに、部屋を増やさずに片づく収納のつくり方をご紹介します。
目次
収納は「量」より「位置」。まずは動線の中に仕込む
片づく家に共通するのは、収納が多いことよりも、“使う場所の近くに戻せる収納がある”ことです。
- 買い物帰りに、キッチンの近くへすぐ置ける
- 玄関で脱いだ上着・カバンを、動線の途中で片づけられる
- 洗う→干す→しまうが、同じエリアで完結する
この「戻す場所が近い」状態をつくると、収納部屋を1つ増やすより、日々のストレスが減ります。
事例① パントリー“部屋”がなくてもOK。キッチン横に機能を集約
まずはキッチンの例。「パントリーが欲しい」という相談は多いのですが、部屋として作らなくても、キッチンのすぐ横に“置ける場所”をつくるだけで、実質パントリーとして十分機能することがあります。

▲ キッチン横に棚とカウンターを設け、家電置き・ストック置きとして使えるスペースに。
このお家では、キッチン正面から見て左側に棚とカウンターを計画。家電や日用品のストックなど、キッチン周りで使うものを“近くにまとめて置ける”ので、作業がとてもスムーズです。

▲ 正面から見ると、棚の使い方がよく分かります。下段は椅子を置いて作業もできる高さに。
さらにポイントは、下段の高さ。棚として使うだけでなく、椅子を置けばちょっとした事務作業ができるミニデスクにもなるように考えています。
普段の家事中はオープンで使いやすく、来客時はロールカーテンでさっと目隠し。「見せる」と「隠す」を切り替えられるので、生活感が出やすいキッチン周りでも安心です。
事例② SICがなくても回る。2way玄関で「見せる面」と「使う面」を分ける
次は玄関。来客が多いご家庭ほど「玄関が散らかるのがイヤ」という悩みが出やすい場所です。そこでおすすめなのが、玄関を2wayにして、来客動線と家族動線を分ける考え方。

▲ 玄関は“何も置かない”くらいスッキリ。来客の目に入る面を整えやすく。
このお家では、来客側の玄関にはあえて靴棚を置かず、すっきりとした印象に。その代わり、家族が普段使う靴や小物の収納は、壁の裏側(廊下側)にしっかり確保しています。

▲ 家族用の靴収納は壁の裏へ。見えない場所に容量を確保して、来客時も安心。
“家族の使う収納”が廊下側にあることで、玄関が散らかりにくいだけでなく、買い物帰りにキッチンへ向かう動線もスムーズに。さらに、壁があることで外からの視線が届きにくく、プライバシーの面でも安心です。
収納専用の部屋(SIC)を大きく作る前に、「見せたい玄関」と「使いやすい収納」を分けるだけで、体感の暮らしやすさは大きく変わります。
事例③ ファミクロがなくてもOK。“廊下”を働かせて収納量をつくる
最後はファミリークローゼットの代わりになるアイデア。ファミクロは便利ですが、部屋として作ると面積が必要になります。そこで、間取りによっては「廊下を収納の通り道にする」方法がとても有効です。

▲ リビングと水回り・居室をつなぐ廊下。両面に収納をつくり、部屋を増やさず容量を確保。
この事例では、リビングとお風呂・居室などを隔てる廊下に、両面しっかり収納を計画。廊下があることでプライベートとの環境を区切りつつ、壁面を“使える場所”に変えています。

▲ 天井照明をなくし、足元灯でふわっと照らすことで、収納が多くても生活感を抑えた雰囲気に。
そして、もう一つのポイントが照明計画。収納が多い場所は生活感が出やすいのですが、この廊下は天井照明をあえて入れず、足元の照明でやさしく照らしています。
ふわっとした光で雰囲気が整うだけでなく、夜中に起きたときも眩しすぎず安心。「収納を増やしても、心地よく見せる」ための工夫です。
まとめ:収納は「部屋を増やす」前に、優先順位をつけて整える
パントリー・SIC・ファミクロは、もちろん“あると便利”です。けれど、全部を部屋として作ろうとすると、家は大きくなり、コストも上がり、土地条件のハードルも高くなります。
だからこそ、まずは
- 使う場所の近くに収納を置く(動線の中に仕込む)
- 見せる/隠すを切り替えられるようにする
- 廊下や壁面など、“すでに必要な場所”を働かせる
この順番で考えるのがおすすめです。収納は、量より設計。ご家族の暮らし方に合わせて“ちょうどいい収納”を一緒に考えていきますので、ぜひお気軽にご相談ください。